子供だって人格あるよね・・・・の巻き

子供だって人格あるよね・・・・の巻き

2008年7月31日(木)

”子供の頃自分が大人と対等に何かできるなどと、思ったことは勿論ないけど
それでも時々、大人の言葉の矛盾や裏表に気付いてしまい、とても困ったりしていた”

旭川に住んでいた頃だった。
小学3年生。
夏だった。
いろんなものを集めるのが流行っていた。
切手・牛乳瓶のふた・メンコ・匂い消しゴム・ラムネ瓶の中のビー玉・グリコのおまけ・漫画シール・マンガワッペン・・。
夏休みが近い頃、学校近くの広い空き地で車の大展示会が開かれていた。
友達がカラーのきれいな紙を学校に持ってきた。
「それ何さ」
「車のパンフレット。展示会にいっぱいある」
「くれるんか?」
「いや、子供にはくれん。こっそりとる」

放課後、パンフレットをたくさん集めようと友達と、張り切って展示会場へ。
色つきのきれいな三角旗が各車会社のテントのてっぺんからサーカスのようにゆれていた。

二人ともパンフレットが何枚か集まりだし、丁度のってきた頃だった。
車会社の販売員のおじさんが、ニッコリと僕にパンフレットを渡そうとしてくれた。
うわぁ嬉しい。
子供にもくれるなんて。
親切なおじさんなんだ。
先に歩いてる友達は気付いていない。
喜んで貰おうとした時だった。
おじさんは僕が出した右手を黙って払い、僕の後ろにいた大人の人に
愛想良くパンフレットを手渡した。
「新車です。どうぞ宜しくお願いします」
おじさんの行動はとてもす早く静かだった。
いつの間にか僕の後ろに大人の人が立っていたんだ。

僕は少し前につんのめりそうになり、間違って貰おうと
手を出した恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
一瞬だったのにとても長い時間のような気がした。
出した右手をどうしたものかと自分の頭を掻いてみたり、プラプラ振ってみたり、その姿を先に歩いてる友達に見られていなかったかドキドキしていた。

パンフレットをコッソリ集め抱えてる子供が側に立っているのは感じているのだろうに、おじさんはまるで僕がいないかのように、次のお客が来ないかと僕の頭越しに遠くを見ているだけだった。
僕が間違えてパンフレットを貰おうとしたことは、僕の手を払いのけたから知ってることだろうに、おじさんはとうとう声を掛けてはくれなかった。
「子供にはあげられないよ」とでも言ってくれたらどんなに助かったかしれないのに。

おじさんのあごの下の、大人のほくろが、少し意地悪そうに笑ったような気がした。

大人になったら絶対この会社の車を買わないでおこうと決めて、そして、このおじさんには子供がいないんだろうなと思った。
でも、もしも子供がいたら、その子がちょっと可哀想になと思った。

次のテントから、友達がまたコッソリ手に入れたパンフレットをうちわみたいにバタバタ振って、笑って僕を呼んでいた。

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